詐欺、それは言葉巧みに人の心の中へ入っていき、気がつくと何もかもを失っている危険な罠。
詐欺師、彼らは人を騙すプロ。人には善と悪の心があるのですが、詐欺師は善の心を利用します。優しい心の持ち主ほど気を付けなければいけません。
「ワシ、詐欺には騙されへんで!絶対に騙されへん。なんで騙されるんか、理解できへんわー」
こういう人こそ危ないのです。
自身を持っている人のところへあえて詐欺師は近づく。自身を持たない人ほど警戒心が強いため。
詐欺被害は日本だけではありません。海外でも多くの人たちが被害にあっています。例えば、映画監督のスティーブンスピルバーグや、ハリウッド俳優 ケヴィン・ベーコン、ジョン・マルコヴィッチ。
誰もが知る大物知名人でさえも騙されてしまいました。気になるのはその被害額。どのくらいのお金が消えていったの?
被害総額は650 億ドル (およそ 6 兆円)。
さすが世界のセレブが集まる場所。
なんて関心をしている場合ではありません。日本円で6兆円。6兆円のお金が消えてしまった。金額が大きすぎてもはや意味が分からない。わけわかめの世界。
知名人たちがこぞって騙されましたが、いったい何が起きたの?
ハリウッドの知名人が騙された史上最大の詐欺事件
映画監督のスティーブンスピルバーグはこれまでに多くの作品を生み出しています。映画「ジョーズ」・「E.T.」・「ジュラシックパーク」を一度は見たことがあると思うのですが、実に面白い作品です。
発想・撮影カット・物語・世界観、スティーブンスピルバーグ監督が生み出す映画は「次のシーンは何が来るんだろう!?」と楽しみながら見ることができます。
そんな彼はセレブ。金持ち。スピルバーグの資産を狙うものがいました。彼だけではなく、ハリウッド俳優の多くが狙われました。被害額は日本円で6兆円。とんでもない額です。
でも、6兆円もの大金をどのようにして奪い取ったの?100万円の束を想像してみると…、6兆円規模をバッグに詰めて運べる量ではありません。
実は、彼らを騙した犯人は25年間に及ぶ長期戦で少しずつ奪っていったのです。しかもこの犯人は誰もが知る知名人だったというから驚き。
つまり、身内の犯行でした。
マドフ詐欺事件とは
スピルバーグや大物芸能人が騙された詐欺事件。繰り返しますが、被害額は日本円で6兆円規模にも及びます。
気になるのは犯人。莫大なお金をまんまと集めることができた人間の正体とは?
詐欺を働いた犯人の名前は「バーナード・マドフ」という人物。
(出典:upload.wikimedia.org/)
優しそうな顔をしているのですが、知名度があるわりに知らない人も多いのではないでしょうか?っというのも、「その道」では顔の知れた人物だから。
- 本名
バーナード・ローレンス・マドフ - 生年月日
1938年4月29日 - 出身地
アメリカ - 備考
元NASDAQ会長
「NASDAQ」です。この時点でとんでもない人物だということがわかる人も多いのでは?
そう、「NASDAQ」はアメリカ合衆国にある世界最大の新興企業(ベンチャー)向け株式市場のこと。つまり、証券取引所。そこの会長でした。
ちなみに、現在はスウェーデンの証券取引所運営会社OMXと経営統合。「NASDAQ OMXグループ」にかわっています。
バーナード・マドフってどんな人?
史上最大の詐欺事件を引き起こしたバーナード・マドフとはどのような人物なの?彼の人生を紐解いてみましょう。
1960年のことでした。マドフは「バーナード・マドフ証券投資会社」を設立。
「投資会社はそれなりの資金と知識がなければ設立できない。」
そういう先入観が多くの人の心の中にあります。会社を設立した時点で、すでに信用がある人物になっていました。数十年間もの間、マドフは資金運用能力を持っている人間だと投資家や富豪からは信じられていたのです。
でも、みんながみんな同じ考えではありません。投資には大きなリスクが付きまといます。ハイリターンを求めると、当然ハイリスクを背負わなければいけません。それが投資。
マドフは夢のような高利回りを謳いながら呼びかけていたのですが、「本当にそのようなことが実現できるのか?現実的ではない」と疑う目を捨てない投資家もいました。目利きのある投資家は後にホッとしたことでしょう。まさかあんなことになっていたなんて、この時はまだ知る由もなかった…。
マドフに転機が訪れます。
サブプライムローン危機が直撃しました。サブプライムローンとは、クレジットカードで延滞を繰り返すなど、信用力の低い個人や低所得者層を対象にした高金利の住宅ローンのこと。
サブプライムローン危機とは、2007年末から2009年頃にアメリカ合衆国で起きた、住宅購入用途向けサブプライム・ローンの不良債権化です。
株価が次々と下落をはじめました。
すると、複数の投資家から総額70億ドル近く(約6300億円)の払い戻しを求められたのです。大金です。マドフには投資家らに払い戻すための現金が確保できなくなっていました。
これまでしてきた不正を隠すことができなくなったのです。2008年12月11日に詐欺の罪でFBIによって逮捕されます。
なぜマドフはリターン分を投資家に支払うことができなくなったの?
詳しく見ていきます。
なぜ騙された?ポンジ・スキーム(ネズミ講)
世界のトップセレブたちはなぜ、25年間も詐欺にあってることに気がつくことができなかったの?
マドフはNASDAQの会長であり、マドフ証券という証券会社の創業者。そもそも詐欺をする必要がありません。彼はお金持ち。人生の成功者。なぜ詐欺を働いたの?
それは、個人的に運用する「マドフ投資の会」が原因。
「マドフ投資の会」で投資家から資金を集めます。例えば100億円集めたとすると、マドフはこの資金を取り崩しながら毎年10%ほどの配当金を投資家に還元します。
これは投資に成功した報酬額として支払う10%。
気づきましたか?
この時点で「おかしい」・「なにか違和感を感じる」と勘づいた人は、詐欺に会う確率が低いかもしれません。
では、何がおかしいの?
仕掛けは簡単でシンプル。元金は100億円あります。別に投資などしなくても、10%の配当なら10年間は「投資に成功をしている」として支払うことが可能です。10年後には100億円に到達する計算。
つまり、少なくても10年間は騙すことができるということ。
ねずみ講は新規の投資家が現れ続ける限り原則破綻することはありません。でも、破綻しないために必要な新しい顧客の数は増加していくため、どこかの時点でいずれは破綻してしまう落とし穴が存在します。
マドフは世間から信用されていました。
それに加えて投資事業が成功しているように世間からは見えていました。彼の元へ次々と新規投資が舞い込んでくます。
マドフの懐は「ウッハウッハ」していました。莫大な資金が豊富に集まってきました。数千億円規模の投資家へのリターンも気にすることなくおこなっていました。
この行為がマドフという人物の信頼度をさらに高めていたのです。
また、マドフは新しい顧客を嫌がる姿勢を見せていました。新規顧客を断ったり、渋々ながら受け入れる姿勢を見せたりすることで、あたかも選ばれた人しか顧客にしないという「付加価値」を印象付けていました。
「自分は特別な存在」このように投資家自身に思わせていたのです。
ねずみ講は自分が騙されていると気づくまで、誰しも自分は儲かっていると錯覚してしまうやり方になります。気がついたときにはお金がどこかへ消えていく。詐欺師側は、その破綻の瞬間までに資金を引き上げれば丸儲けができる仕組み。
破綻した瞬間に、多くの投資をしていた投資家が大損をしてしまうという恐ろしいネズミ。「チューチュー」と鳴きながら古参プレイヤーが新参プレイヤーのお金を毟り取る。
マドフの詐欺がバレる
人生とはうまくできているもの。悪いことをするといつかは痛い目に会う。25年もの間、新規投資を集め続けたマドフですが、ついに終止符が打たれるときがきました。
リーマン・ブラザーズの破綻。
リーマン・ショックとは、2008年にアメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことに端を発し、連鎖的に世界規模の金融危機が発生したことの総称です。
世界同時金融危機がマドフを襲います。リーマン・ブラザーズの破綻により、金融機関が資金繰りに困る事態が発生。その対策として一気に資金を引き上げる必要が出てきました。
これで困るのがマドフ。投資資金の返還に応じることができなくなりました。マドフのファンドは、大手金融機関と取り引きのある複数の投資会社からも多額の資金を集めていたのです。
詐欺がバレて逮捕されるマドフ。マドフが関わる投資会社も次々と破綻。尚、日本の銀行や証券会社にまで被害が及んでいます。
被害者は訴えました。
「この事件は、刑事事件、殺人や暴行事件と同じだ。罪のない人を巻き込んで、生活をメチャクチャにしている。私達はすべてを失ったんだ。制裁を!」
逮捕された当時72歳でしたが、懲役150年の刑が言い渡されました。150年の刑…。さすがアメリカ。
マドフにはビジネスパートナーがいました。ティエリ。彼の逮捕を受けて手首を切り自殺。マドフが逮捕されて2年目、息子のマークも首を吊り自殺しました。
家族はマドフが詐欺をしていたことを知らなかったことになっています。身内が犯した凶悪事件に耐えかねて自ら命をたったのでしょうか。
まとめ
人の心理は複雑で簡単なのか…
マドフは資金を運用せずに、集めた資金を配当に使っていました。「ポンジ・スキーム」と呼ばれる古典的なネズミ講です。多くの人たちが騙されてしまいました。
人はその人物を信用するとお金を貸す。そのお金を貸した人物が信用をできる人なら、さらにその周囲の人がお金を貸す。その信用できる人を見て、その周囲の人がさらにお金を貸す。ネズミが子を産むように爆発的に増えていく。
スピルバーグやハリウッド俳優は信用できる人です。その人が投資をしている人なら安心。そのような安易な気持ちから、「チューチュー」と鳴くねずみ達が増殖していったのでしょう。詐欺がなくならない日本、お金を出すときには細心の注意が必要です。