身の毛もよだつ寒い寒い冬が過ぎ、次に訪れるのは春。
「春は心地良い」
ここから1年が再びはじまる、そんな空気に包まれます。
春といえば桜は欠かせません。桜の開花期間は短いです。満開宣言がされてからわずか1週間程度が見頃。そのため、花見の計画を立てた日に雨が降るとガッカリする人も多くいます。雨により桜の花びらが散ってしまうためです。
風に舞う桜の花びらは美しいのですが、雨により散ってしまう桜の花びらはなんだか悲しい。地面に落ちた桜の花びらは雨に打たれ土で汚れ、見るも無残な姿に変わります。
でも、桜のいいところはそこにあるのです。
常に見れるものは貴重度が低くなるため価値が下がり人はこう考えるでしょう。
「いつでも咲いてるから今度見に行けばいいじゃん」
そういって結局は行かないパターン。ピンク色をした美しい満開期間の短い桜だからこそ、多くの人を魅了し続けています。
そんな桜ですが、山桜もあれば川沿いの土手に咲いている桜も多いです。山桜は無造作に咲いている感じですが、川沿いの桜は規則正しく並んでいることに気づきませんか?
その理由は、土手付近は人の手により規則正しく植えられているため。
でも、土手は足場が不安定な場所が多くあります。
いったいなぜ、この場所に桜を咲かせようと思ったのでしょうか?
桜がきれいに咲く場所には人が集まりやすいです。
しかしその場所は川が近い土手。
子どもが誤って川に転落したら大変なことになりかねません。人を危険な場所から遠ざける意味合いでも、川から離れた場所に桜を植えようと考えそうですが…?
実際は川沿いの土手付近に川の流れに沿って植えられています。
なにか理由があるはずです。
桜が土手に多い理由
山桜も美しいのですが、川沿いに並べられた桜も負けじと美しいです。
きれいな薄ピンク色で人々の心を癒します。
川沿いに並べるように植えられた桜の木、実は江戸時代のある事件がきっかけになり、このような形に定着していくことになりました。
気になる「ある事件」を見ていきましょう。
すぐに川が氾濫する江戸時代
江戸時代にさかのぼります。
江戸時代の頃には大雨が降ると川が氾濫しやすいでした。
すぐに土手が決壊することも…。
堤防を作っていても次の年の洪水には決壊。作っても決壊、作っても決壊することが繰り返されていました。
「これは困った…」
堤防を作ると土が固まりますが、土手には水が溜まっている状態です。
いわゆる「保水」です。
その水が冬になると凍結。そして新しい年を迎えて春になると、凍結していた水が溶けてしまい、堤防(土)の中に空洞ができます。すると、強度を失った土手はその年の洪水により崩れてしまいやすくなるのです。
- 堤防を作り土が固まる
- 土の中に保水が溜まる
- 冬になるとその保水が凍結
- 春を迎えると水が解ける
- 解けた部分に空洞ができる
- 土の中に空洞ができたことで強度を失う
- 洪水により崩れてしまう
現在はコンクリートで川が氾濫しないようにインフラ整備がされていますが、昔は川が氾濫するたびに大変な思いをしていました。
そこで江戸の人たちは考えます。
「どうしたらお金があまりかからずに川の氾濫を抑えることができるんだろう?」
そうだ!花見客を利用しよう
そこで目に止まったのがお花見でした。
土手に桜を植えれば毎年多くの人が花見に訪れます。
人が来るということは?
そうです。そこの地面を踏んでくれるため、土を固めてくれると考えたのです。土がかたくなれば水で土が削れにくくなります。
こうして川沿いに桜が多く植えられるようになりました。
ようするに、江戸人が知恵を絞って考えた「災害対策」の結果だったのです。
- 桜の木は浅く広く根を張る性質があり土手の強度が増す
- 桜の木があることで花見客が訪れ土手を踏み固めてくれる
まとめ 江戸政府は利口で、花見客を利用して災害対策をした
江戸時代になると、花を見る習慣が民の間で流行していました。
毎年、桜が咲く頃になると土手に人が集まります。人が来るということはそこにある地面が踏まれる。つまり、上からの圧により土が硬くなっていくことを意味します。
土が頑丈になれば水の力にも耐えることができ、土が削れずに済みます。
桜の木は深く根を張らずに浅く広く張る特徴があるので、根を面積広く張ることで、桜の木が土に含まれる水分を効果的に吸収してくれます。
このように、ダブルの効果で川の氾濫を防止することができる素晴らしいアイデアを思いつきました。その結果、川沿いに沿う形で桜が植えられることになったのです。
大雨による洪水で何度も流される土手を、何度も修復するにはお金も人の手も使います。非常に大変です。
治水事業に頭を悩ませていたところ、桜の木を植えてそこに大勢の人を花見客として呼ぶことで、土手を踏み固めてもらおうと思いつきました。
江戸時代から花見をする行為が庶民で人気を集めだしていたため、タイミング的にもバッチリでした。農民が多い江戸時代の人は氾濫する川に悩まされ、役人もその川で困っていましたが、桜の花見の登場により、「農民」と「役人」共に良い結果を出すことができました。