5月~6月初旬には、成虫になったホタルが羽を広げて夜空に飛び立ちます。
日本では昔からある風情。
人々は、月夜に照らされる水辺の付近を飛び回るホタルに心を奪われてきました。
美しいホタル。
わずか1週間ほどだけ飛び回ることができる儚いひと時。そのホタルを、カメラで撮影してみてはいかがでしょうか?
無料でホタルの光跡を残す方法になります。
ホタルはきれいパラ!夏の風物詩パラ!カメラに撮りたいパラ
ホタルを撮るにはカメラの設定が重要なんだ
蛍をカメラで撮る設定方法
風物詩であるホタルを撮影するのは、簡単ですが難しいです。
っというのも、ホタルの光はとても弱いので、ある程度のカメラ性能がなければ簡単に撮ることが難しくなります。
まず最初にすることは、撮影のマナーを考えること。
ホタルを撮影する時間帯は基本的に太陽が沈む頃。周囲は暗くなっています。つまり、周囲で撮影している人や観察をしている人の迷惑にならないようにしなければいけません。
フラッシュはNG
暗闇でのフラッシュはダメです。
他の撮影者がカメラで撮っているときにフラッシュを焚いてしまうと、その光が撮影者のカメラに入ります。
ホタルの光はとても弱いですが、フラッシュの光は非常に強いものになります。フラッシュの光が入ることで、撮影した写真がパー!(使えない静止画)になってしまうのです。
また、蛍も強い光を嫌います。
強い光に晒されると、いっとき光を出すことを辞めてしまう場合もあり、近距離のフラッシュの場合は最悪、ショック死することもあります。
ホタルを観察するときには、カメラのフラッシュはNGです。
AF補助光をOFF
人工的な光がダメなので、カメラがAFを合わせるときに出る、オレンジや赤い光のAF補助光を、カメラの設定でOFFにしましょう。
そもそも暗闇での撮影になるので、カメラのオートフォーカスは基本的に使えません。
ONにしていても迷惑をかけるだけで、意味がないのでOFFへ。
インジケータランプ・液晶モニタの光をOFFにする
カメラの液晶モニタは明るいですよね?
ランプ類には黒いテープを貼り付けて遮光すると良いでしょう。
ファインダーがついているカメラなら、液晶を消してファインダーオンリーにします。液晶モニタしかないカメラは、画面設定で明るさを最低にしてください。
そして、手で包み込むようにして外に光がなるべく漏れないようにする工夫が望ましいです。
車のライト・携帯電話の光に注意
車のライトは強烈です。
現場近くを照らさないように気を付けます。ただし、蛍がいる場所は比較的危険な場所も多いため、安全を第一に考えてください。
携帯電話の光にも注意しましょう。
自分では気づかないかもしれませんが、携帯電話の光は遠くからでもすぐにわかるほど周囲を照らして光ります。
物音を抑える
大きな話し声は周囲に迷惑がかかります。
静かに観察しましょう。
物音を大きく立てないように注意が必要です。
ホタルは人間が近くにきてもあまり逃げない性格をしています。バッタやセミなどと比較してみると一目瞭然。こちらは人が近づくとすぐに逃げます。
でも、蛍は逃げません。
むしろ、人の方へ向かって飛んできます。
人に慣れているホタル。
人の怖さを知らないホタル。
だからこそ、カメラに収めることができるので、静かに観察することが大切です。
懐中電灯は足元だけを照らす
ホタルのいる場所は、川の近くのため危険な場所も多いです。
懐中電灯の光は足元だけを照らすようにして、安全を確保しましょう。
懐中電灯の光をホタルに向けてはダメです。
ホタルの撮影時間帯とカメラ道具
マナーを心得たので、次はホタルが出現する時間帯を確認しましょう。
ただ、相手は生き物なので正解はありません。
ホタルの「撮影時期」と「時間」は、当日の気温や住んでいる地域にも左右されます。気温の関係からホタル前線は、南は早くて5月頃(ピークは5月中旬)から。北は遅い傾向があります。北海道は7月~8月初旬になることも。
ホタルの撮影では時間帯が重要です。
一般的にホタルが動き出すタイミングがあります。それは、完全に暗くなった夜よりも、日没から少し経った若干光の残った時間帯。
真っ暗闇で撮影するよりも、若干、周辺の雰囲気も写し出すことができれば幻想的な写真を作ることが可能です。
時間でいうと、夜7時~夜8時の1時間の間で、夜8時頃をピークに迎えることが多いです。
ホタルの撮影に必要なカメラ
- 長時間露出の可能なカメラ
- 15秒~30秒程度のシャッタースピード(バルブ(B)やタイム撮影(T)機能がベスト)
- マニュアル露出機能
- 明るいレンズ
- マニュアルフォーカス
ISOを下げることができるので、レンズはできるだけ明るいほうが有利です。
必要なアイテム
ホタルを綺麗に撮影するために、カメラ撮影時に持っておきたい道具になります。
三脚
一匹の個体を撮るのなら良いのですが、飛んでいるホタルの光跡を写すには、シャッタースピードを遅くする必要があります。
手持ちで30秒を静止させることは不可能なので、カメラがブレないようにしっかりとした三脚を用意しましょう。
レリーズ/リモートコード
シャッターを押すときに、カメラに振動を与えてしまうので「レリーズ/リモートコード」があれば安心です。
ただ、「セルフタイマー」を使えば代用できるので、必ずしもレリーズ/リモートコードは必要ありません。
2秒にセットしましょう。
セルフタイマーのランプ(光)には気を付けます。手で塞ぐか黒いテープで塞ぐとOK!
ホタルの光跡を撮影する設定方法
蛍の光跡を写真に残したい場合には、カメラの設定が重要です。
シャッタースピード
カメラを三脚にセットし、15秒から30秒程度のシャッタースピードに設定します。
例えば、富士フイルムのカメラの場合は、シャッタースピードのダイヤルを「T」にしましょう。「B(バルブ)」にセットすると、最長で60分間まで撮影できますが、長すぎるとノイズが発生しやすくなるので注意が必要です。
ホタルの光跡を撮影するには、長い時間カメラを開いた状態にする必要がありますが、そうなると「30秒よりも2分など長時間に設定した方がいいんじゃないの?」って思いますが、そう簡単な話でもありません。
ホタルが出現する場所には人も集まります。
車で来る人、懐中電灯をもっている人、携帯電話を触る人など、シャッター時間を長くすると「撮影に不要な光」がカメラの中へ入ってしまうリスクが高くなります。不要な光が入るとその写真はパーです。
リスクを下げるために、30秒くらいにして、その構図のまま10枚程度撮影します。
その写真を後でソフトを使い合成しましょう。
カメラによっては「多重露出撮影機能」がありますが、試してみると良いでしょう。光跡をたくさん残す場合は、撮影枚数を多くする必要があります。
絞り設定
開放絞りは、そのレンズが持っている一番小さい数値にします。暗い場所での撮影なので、絞りを開放することで、ホタルの光をたくさん取り込むことができます。
マニュアルフォーカス
暗い場所ではカメラのAF(オートフォーカス)が効かないことも多いです。
ちなみに、「X-T4」は暗闇のオートフォーカスに強いですが、「!AF」と表示されたらマニュアルフォーカスに切り替えましょう。
わざとホタルの光を線ボケのように撮影する方法もありますが、まずは一番ホタルの光がくっきりとするポイントにピントを合わせます。
一番良い方法は、辺りが暗くなる前に現地に入り、ホタルが出そうな場所に目星をつけて三脚にカメラを固定します。このときに背景にピントを合わせて置くことです。
ISO感度
ISO感度は、その場所の環境とそのときの時間に左右されます。
「F2.0」の絞りを利用している場合は、「ISO 400~800」を目安にテスト撮影をしてみましょう。
環境の明かりに合わせた調整をおこないます。
ISOをあげるとホタルの光もよくとらえることができますが、周囲の風景まで明かるくなるので注意をします。風景が薄暗く写り、蛍の光が綺麗に光跡する絶妙なISOの値を探ります。
ただ、ISO感度を高くするにつれて、ノイズが多く出る可能性が高まるので気を付けます。
ホタルの種類
日本にホタルは数十種類生息しています。
一般的によく知られている代表的なホタルは「ゲンジボタル」・「ヘイケボタル」・「ヒメボタル」の3種類です。
光るタイミング・長さ・明るさがそれぞれ異なるので、出来上がる写真も変化します。
ゲンジボタル
日本で一番良く見かけるホタル。体長15mm位で光が強く、一回の発光がゆっくりで比較的長い事が特徴。
ゲンジボタルは線状です。
ヘイケボタル
ゲンジボタルより少し小さい体長 8mm~10mm位。比較的発光量は少ないですが、発光中に3~4回ほど揺らめくように発光量が変化する特徴があります。
ヒメボタル
ヘイケボタルに似ていますが、若干小さい体長 7mm~8mm位。短い間隔で明滅を繰り返す発光パターンになるので、光跡は一本の線にならずに点線状に写ります。
下の画像はヒメボタル。丸玉になります。
ホタルの光跡を無料ソフトの「GIMP」で合成する方法
Photoshopのような機能を持つフリーソフト「GIMP」を使って、ホタルの画像を合成します。
GIMPの無料ダウンロードはこちら。
合成のやり方はとっても簡単です。カメラの構図を変えていない同じ場所のホタル画像を複数枚用意します。
GIMPを起動して、ファイルから「開く」を選び写真を1枚読み込みます。
1枚選択したらGIMPに読み込んだ画像が表示されます。
次に同じ構図の写真を複数枚読み込みますが、「レイヤーとして開く」を選択してください。ここで1枚1枚選択しても構いませんが、最初に新規で読み込んだ画像以外の、すべての画像を一気に読み込んだほうが楽で便利です。
レイヤーに追加する残りの写真を全て選んで開くと、レイヤーとして取り込まれます。右側のツールバーに読み込んだ画像が表示されます。
比較明合成をします。
画像をレイヤーに追加したら、いよいよ合成作業です。右のツールバーに「モード 標準」とあるので、タブをクリックします。
その中から「比較(明)」を選択しましょう。
これは、画像の中の明るい部分だけを抽出して合成させる機能です。間違えても「比較(暗)」にしないようにします。暗い部分だけを取り込むため、真っ暗になります。
※ 選択するのは「比較(明)」の方です。すべてのレイヤー画像に設定します。
「比較(明)」を選択していくと、画像に明るい部分が追加されていくことがわかるはずです。どんどんホタルの明るさがプラスされていきます。
たくさんホタルの画像枚数がいるのはこのためです。
写真の枚数が少ないとホタル光跡も少なくなります。
合成のメリットは、光が被っている画像を除外したり、車のライトなどの失敗画像を除外しながら、意図的に成功したホタル画像だけを合成できるところにあります。
下の画像はわずかにホタルがいますが、あまりわかりませんね。Webにアップするとさらにわからなくなりました。
1枚の画像
構図を変えて2枚合成しました。少しわかるようになりましたが、枚数が少ないのでホタルの光も少ないです。
3枚合成しました。
6枚合成。
このように、枚数を重ねることでホタルの光跡が多くなります。この場所は20mほどホタルから離れています。光が小さいですね。
下の写真みたいに撮るには、ホタルとの距離がポイントです。
可能な場所であれば、蛍との距離1~2mで撮影しましょう。目の前にホタルが飛んでくるほどの距離(ホタルの群れの中)で撮影します。光が近く大きくなるので、カメラもホタルの光をとらえやすくなります。明るい望遠レンズを使う手もあります。
ホタルの動画を一眼カメラで撮影
ホタルの動画撮影は厳しいです。
例えば、富士フイルムカメラ「X-T4」の場合は動画撮影でシャッター速度を1/4まで落とせますが、ある程度の光が入る分、動きはカクカクになります。滑らかな動きにしたいので、シャッタースピードは1/30へ。1/60でも良いのですが、一段分暗くなります。
- シャッタースピードを1/30秒にセットしましょう
- ISOは膨張モードで「ISO 51200」に設定
- レンズはF2など明るいものを使用します
- 手ぶれ補正はOFF
- 三脚にセットする
ISOが高いので、かなり多くのノイズが発生します。
作品というよりは思い出を残す撮影になりそうですね。この点はAPS-Cではなく、高感度耐久の強いフルサイズカメラや中判カメラの方が断然有利です。
ちなみに、X-T4だけではなく、X-T3やX-T30など他のカメラでも同様に撮影ができます。スマホでもホタルの点滅くらいなら撮れると思います。ISOに左右されるので、背景まで写すのは難しいかも?
X-T4で撮影しましたが、ホタルの数が少なかったのと、もう少し空を映して背景を明るくする構図にしておけばよかったと後悔。アングルに失敗しました。っが、なんとなく雰囲気は伝わると思います。
右上の空を見るとノイズが乗っていることがわかると思います。
ザラザラしていますね。
ISOを下げると、今度はホタルの光が小さく弱くなるので動画撮影の難しいところ。これはどのカメラでも同じです。綺麗に動画撮影したいのなら、高感度のビデオカメラがおすすめです。
ソニーのα7Sシリーズは高感度耐性が高いので綺麗に撮影することができます。
真っ暗闇の条件で、X-T4でもここまで撮影できるので、月明かりがあり構図を見極めたら美しい動画が撮れると思います。(空にノイズは出ますが…)
まとめ
ホタルは日本の風物詩。
ユラユラと浮遊するホタルは夜間に空中を浮遊する火の玉「人魂」のよう。
「ん?夏…川の近く…水辺のある林・墓場の近く…地上のあまり高くない場所をふわふわ…光る玉の正体はホタル!?」