アクアリウムを楽しむために魚を水槽の中で飼育したいと思っている人も多いのではないでしょうか?
アクアリウムを楽しむためには、水生生物のことを知る必要があります。
魚は大きく「淡水魚」と「海水魚」に分けることができますが、双方の違いはあるのでしょうか?
淡水魚と海水魚の体質とは?
川の魚はあまりカラフルではありません。
海の魚はきれいな模様が多いです。
それは、「保護色」が関係しているためです。
保護色は外敵に見つからないように身体の色を環境に合わせること。川には石が多いので、地味な色をした魚が多くなります。海はサンゴ礁や海藻が豊富なため、魚の色のバリエーションも豊富になります。
淡水魚と海水魚は共存できない理由
メダカとカクレクマノミを一緒に飼育している水槽を見てことがありますか?
「ない」と思います。
川の魚と海の魚は基本的に一緒に共存することはできません。
川の水を飲んでもしょっぱくはありませんが、海の水を飲むとしょっぱいです。
ここにヒントがあります。
生息域が大きく分けられる魚の種類
海水魚と淡水魚の他に、ウナギ・鮭など「汽水魚」と呼ばれる淡水と海水の中間に位置する魚がいますが、大きく分けると淡水魚と海水魚の2通りに分けることが出来ます。
基本的に海水魚と淡水魚は別物と考えておきましょう。
そのため飼育をしたい魚を、まずはどちらの環境に生息しているのかを確かめる必要があります。
体色の違い
生物は周囲の「物」や「事」に同化する擬態を行うものがいます。いわゆる忍者の「隠れ身の術」のようなものです。
自分よりも大きな魚などの攻撃を回避するために、川にいる魚は石や岩などが周囲にあるため黒色に。そして、透き通る川水により銀色などが多くいます。
また、水草も同様で緑色が多くを占めます。
反面、海の生物は青色の海やサンゴ礁などに同化をするため、黄色・青・白・赤・中には発光するものまで実に様々な種類が存在します。また、緑色の海藻以外にもイソギンチャクやサンゴ礁など豊富な色が海には広がっています。
水質の違い
海水魚と淡水魚では住んでいる水の水質が大きく異ります。これは、「塩分濃度」や「浸透圧」などの問題があるためです。
浸透圧とは、同じ溶質が溶けている濃度の異なった溶媒を半透膜を境にして接触させるときに生じる圧力のことで、自然界は全体を同じ濃さにしたい傾向があります。
高濃度の液体と低濃度の液体を半透膜で仕切ると高濃度の液体が薄まり、低濃度の液体が濃くなるため、双方の液体の濃度が同じになろうとします。
ナメクジに塩をかけると水分が蒸発してナメクジは命を落としますが、魚も同じで塩分の取り過ぎは命の危機に繋がります。
そこで海水魚の魚は干からびるのを防ぐために大量の海水を摂取しますが、同時に塩分を排出する仕組みも備わっています。
海水の浸透圧は魚の血液の約3倍ですが、淡水は0.3%程度と言われています。海水魚の血液の浸透圧は海水の浸透圧より低いので、何もしなくても体内の水がエラや身体から出ていきます。
しかし、この状態だと水分がどんどんと抜けてしまい体液が濃くなってしまうため、多くの海水を飲むことで腎臓で多くの水分を再吸収します。
このようにすることで濃度を一定に保っています。
つまり、海水魚は体液と同じくらい濃い尿を少量排出し、過剰に摂り込んだ海水の塩分は、エラや身体から排出しています。
一方、淡水魚の血液の浸透圧は周囲の淡水より高いため、体内に水が次々と入ってきます。この状態が続くと体液が薄くなり水分を多く含むブヨブヨとした身体になるため、腎臓で水の再吸収を抑え、食べ物やエラから塩分の再吸収を増やして薄い尿を多量に排出し、体内の濃さを維持しています。(10分の1程度排出)
淡水魚と海水魚は奇跡の中間で共存ができる
淡水魚は淡水の環境、海水魚は海水の環境でしか住むことはできません。
しかし、これはあくまでも「基本的には」ということ。
『淡水魚と海水魚は共存することもできます』
実は、同じ濃度の食塩水にしたら一緒に暮らすことが可能になります。
淡水魚と海水魚が一緒に飼育できる理由
淡水魚は一定濃度の食塩水で生きていくことが出来ます。
海水魚も海水よりも薄い食塩濃度で生きていけます。
つまり、双方の体液食塩濃度は同じなのです。
淡水魚と海水魚が生存可能な塩分濃度には幅がありますが、その幅には重なる部分があるため、この濃度に合わせることで両者は共存可能です。
海で暮らす鯛と川で暮らす鯉が一緒に共存する不思議な光景も見ることが出来ます。
淡水魚の飼育は海水魚の飼育に比べて難易度が下がります。海水魚の飼育は水槽周りが塩に晒されるため、定期的な掃除が必要です。
また、こまめに海水魚が生きていける塩分濃度を計る手間がいります。多量の酸素も必要です。海水の性質上酸素が溶けにくいことも注意が必要になります。
海水で暮らす魚と淡水で暮らす魚には、塩分濃度という大きな違いが存在します。海水に合わせると淡水魚が生きていけません。逆に淡水に合わせると海水魚が生きていけません。
しかし、その『中間になる塩分濃度を維持する』ことができれば共存も可能になります。
ただ、海水魚と淡水魚双方共に、本来快適な塩分濃度ではないため快適な空間とは言えないかも知れません。
「淡水 → 汽水 → 海水」と、川から海にかけて塩分濃度が変わりますが、汽水域に住む魚や、汽水と淡水と海水を行き来できる魚もいます。例えば、クロダイ(チヌ)やスズキ(シーバス)などです。完全海水よりも汽水域で生息可能な魚の方が、塩分濃度を薄くしたときの負担が軽くなり、共存がしやすいです。
っとはいえ、海水魚は淡水魚よりも飼育レベルが上がるため、アクアリウムを始めたい初心者は淡水魚から始めると良いでしょう。
まとめ
アクアリウムは癒しを求めることができますが、魚にとって快適な空間をつくることも大切なアクアリウムのひとつになります。飼いたい魚が暮らしている環境にあわせて飼育することが大切です。
ちなみに、海にいるマグロがたまに道を間違えて川へ迷い込むことがあります。エラが大きいため数日は生きていけますが、浸透圧の関係で徐々にちからが弱くなっていきます。