イカ墨パスタにハマっている人も多くいます。
イカの墨でお歯黒状態になりますが、それもまた良い!
ところで、墨を吐く生物でイカと常に比べられるタコがいますが、タコ墨を使用した料理はあまり聞いたことがありません。
タコ墨パスタを無理やり作ったら一皿1万5000円という高額になると聞きます。
いったいなぜそうなるのでしょうか?
イカ墨とタコ墨の違い
イカは別名「墨魚」とも呼ばれ、イカと墨はセットで意識されているので切り離せません。
ヴェネチアのスパゲッティ・ネーロ、沖縄のイカスミ汁、日本の塩辛「黒づくり」など、イカの墨を使った料理は、コクと旨味があって非常に美味しいためハマる人が続出しています。
墨に含まれる「ムコ多糖類」という糖質成分が血液に良く、痛みを和らげる効果があるともいわれています。
その反面、同じように墨を吐くタコの墨を使った料理はあまり聞いたことがない人も多く、ましてや食べた人もあまりいない。
「タコの墨はおいしくないから」単純にこのように考えてしまいますが実際は?イカもタコも、敵から襲われた時に、敵から逃れるために墨を吐き出しますが、イカ墨とタコ墨にはその効果に違いがあります。
イカ墨の特徴
イカ墨は、粘液が多く含まれるため、海中で自分の大きさくらいの塊になって漂う特性があります。この墨が敵から見ると餌だと認識され勘違いします。
つまり、「ダミー」。
イカ墨には旨味成分が含まれているため、敵がそっちに気を取られている内に逃げるのです。
- 分身の術!
- 身代わりの術!
タコ墨の特徴
タコ墨は粘度が低いため、吐き出されると海中ですぐに広がります。タコの場合は、墨で敵の視界を遮ることを目的にしています。敵が混乱している内に逃げます。
・隠れ蓑の術!
イカの墨は、するめを作る際に産業廃棄物として大量に捨てられていましたが、イカの墨にはセピアメラニンと呼ばれる色素があります。
黒づくりの塩辛が、白づくりや赤づくりよりも多少長持ちすることから制菌作用があると言われています。
そして、1990年ごろに青森県の産業開発センターがイカの墨から得たムコ多糖ペプチド複合体に、制癌作用があることを明らかにしたことでイカ墨ブームにつながります。
タコは?タコ墨に含まれる旨味成分は、実は、イカよりもタコの方が多いことが判明しています。タコ墨のほうが美味しいのです。
アミノ酸であるアスパラギン酸とグルタミン酸などの量を比較した日本調理科学会のデータによると…。
主なアミノ酸含有量比較
100g中 スルメイカ イイダコ 、マダコ
- タウリン 374.2mg 122.1mg 451.4mg
- アルギニン酸 17.1mg 105.3mg 47.2mg
- アスパラギン酸 8.7mg、42.2mg 26.0mg
- グルタミン酸 24.4mg 74.4mg 71.8mg
タコ墨の方が多いことが分かりました。
なぜ美味しいタコ墨を使用しないのでしょうか?タコ墨を使用した料理がない本当の理由は?それは、タコの墨袋がイカの墨袋と違って、簡単には取り出しにくいから。
タコの墨は、肝臓に埋まったようになっています。破らずに取り出すことが非常に難しいのです。そして、タコは水揚げの際に墨を吐いてしまうことが多く、ほとんど残っていません。
マダコの墨の量は、イカの10分の1程度と言われて、墨の量がそもそもごく少量であるのに、実際取るとなるとその手間をかけた程の見返りがなく大変。
タコ墨を使った料理がないのは、「手間」と「コスト」がかかるという理由から出回ることが少ないのです。
タコ墨でいざ料理を作ろうと思うとタコの匹数も必要になり、墨を取るための技術も必要になり値段が跳ね上がります。タコの大きさにもよりますが、2人分でタコ50匹以上が必要になるのでは?
そして、イカとタコでは墨の成分が異なり、イカ墨にはタコ墨の3倍の油分が含まれているのに対し、タコの墨には油分が少なく水にサッと溶けてしまうため、パスタへの絡みが悪く麺類の料理には向いていません。
まとめ
コスト的にも料理面でも不利なタコ墨。
ちなみに、イカをさばくには、まず筒状の胴体から足を引き抜くのが一般的で、足と一緒にワタ(内臓)も出てくるから簡単に処理できます。
このときイカ墨袋・墨汁嚢(ぼくじゅうのう)も付いてくるので、破かないように切り離せば完了します。