病気になると病院に行き、診察を受けますが、あまり腕のいい先生ではないことを何ていいますか?
やぶ医者!って言いますよね。
やぶと言えば、草や木が生い茂った一角、竹藪、森林などを指します。
医師と竹につながりがある?
「やぶ医者」の本当の意味とはどのような由来があるのでしょうか?
やぶ医者の意味とは
やぶ医者の「やぶ」は、竹藪などの「藪」を指しているのでしょうか?
この場合だと、草木が生い茂る竹藪の中から、木の実などを採取して薬に使う流れが想像できます。その薬の出来が悪かったことから、腕の悪い医者という意味で「やぶ医者」の語源になった?
実は別の意味があります。
現在の兵庫県養父市は、昔「但馬国養父」と呼ばれていました。養父市では平成26年から「やぶ医者大賞」を設置し表彰しています。
一見すると、まったく有り難くない賞ですよね。
「あなたは悪い医者だ!」
っと、お墨付きを与えられたような印象を受けます。
しかし、選ばれている医者の人たちは地域医療に貢献している腕の良い医師なのです。
つまり、本来、やぶ医者の「やぶ」は腕の悪い医者という意味ではないことがわかります。
やぶ医者の由来
時代はさかのぼり、江戸時代。
長島家があり、この家系は元々、養父市の医師でした。長島的庵の父である瑞得は第五代将軍綱吉の奥医師(江戸幕府将軍家の主治医)です。
瑞得の息子にあたる的庵も父の跡を継いで医師になりました。現在は自分のやりたいことを優先して職業を選ぶことができますが、この時代は特に後継ぎが優先されていました。
的庵は54歳のときに奥医師になります。的庵の腕は素晴らしく「天下一の名医」と呼ばれるほど!江戸中、いえ、日本中の人々が的庵に見てもらいたいと思っていました。
長島家が養父の出身であったことから「養父(やぶ)の医師は名医」として広まっていったのです。
「養父に行けば難病も治る!」人々にとっては、自分の命を救ってくれる神様仏様が住んでいる場所と思っていたに違いありません。
この地区の名医は「死んだ人間をもよみがえらせる」とまで言われたほど。さらに、治療で得た糧(食料)を貧しい人への薬代にするという優しい医者が集まっていました。
「でも、悪い人もいた!」
養父の医者は腕がいい。どんな病気も治してしまう。そのように広まると多くの人がこの地区を目指してやってきます。そこに目をつけたのが悪徳業者。お金儲けをしようと企んでいる悪い医者が出てきました。
この医者は養父の出身でもなければ、養父にいる名医の弟子でもありません。養父には一切関係のない人なのに、「自分は養父の医者だ」と便乗商法を開始。
高い治療費や薬代を請求するぼったくりが頻発するようになります。
知識が十分にない医者になるので、当然、薬も効きません。薬は効かない、病気は治らないのに治療代だけは高額。こうなると患者は不信感を抱くのも無理はありません。
養父の医者に悪い噂が流れ始めました。
名医にとってはとばっちりです。
現在は国家試験があるので一定の腕を持つ医者しかいません。でも、当時はこのようなものがないので、誰でも医者を名乗ることができたのです。
養父に偽物の医者が増えていった結果、「養父の医者は腕が悪い、悪すぎる!養父(やぶ)医者だ!」と広まってしまいました。
野巫医からきてる説
上記に記載したとおりヤブ医者の由来になりますが、諸説あります。
貧しい医者は高価な薬を仕入れることができません。藪の中から草や根を採ってきて、テキトーに調剤をしていたことから「ヤブ医者」という言葉ができました。
この他にも、「野巫医(やぶい)」から来ているというものもあります。野巫とは田舎の巫女のこと。
ミステリアスな巫女さんというイメージを持った人が、医術よりも「呪術」を使うように見えてしまったのです。「怪しい医者「野巫医」だ!」ということから「やぶ医者」という言葉が誕生しました。
まとめ
ヤブ医者は養父の腕のいい医者のこと。
「ヤブ医者」は、もともと養父の腕のいい医者のことでした。でも、その注目度に便乗して悪いことを考える人が増えます。
その結果、養父医者を名乗る腕の悪い偽物医者が増えたことで、腕の悪い医者のことをヤブ医者と呼ぶ意味にかわってしまったのです。